スクランブル交差点の真ん中で。
私は昔から、「大人になりたくないなあ」と思っていた。
理由は単純で、常日頃からニュースで流れる大人たちの大変な現場を見せられていると、それはそれは大人になる気力なんて起きなかった。
しかしどんなに大人になりたくないと願ったところで、時間は止まることを知らない。
身体は常に細胞分裂を繰り返し、肉体は様々な経験を手にし、確実に成長を遂げている。
でも心だけは常に、子供でありたいとひたすらに願い続けていた。
そうして出来上がったのは、見た目だけ一丁前に成人のそれを手にした中学生なのである。
付け焼刃程度の勉強だって、1年使わないだけですぐに忘れる。
出会った旧友達は皆、スクランブル交差点の中央で偶然すれ違った道行く人のように
その瞬間だけ隣り合い、1秒後には皆別々の道を歩んでいる。
たまたま一直線の道を歩いている人がいるから、私の周りにはそれなりの友人がいるだけで
きっとすぐに分かれ道が現れるのだ。
やがて道は自分専用となり、足場は崩れかけ、いつ踏み外してもおかしくない。
そんな人生を送るのが嫌だったからこそ、私はスクランブル交差点の中央に居たかった。
私がここにいるだけで、みんなと出会い、みんなと別れ、そしてまた別のみんなと出会う。
そんな世界にあこがれていた。きっとこれは現実逃避なんだろうけれども。
だけどもうそんなことも言ってられなくなった。
信号は点滅し、今にも赤になろうとしている。
行こう、大人の世界へ。
私(BALL)は、本日2017年9月30日をもって、20歳になりました。